講評
第11回 看護・介護エピソードコンテスト秋山選考委員

ここ数年、200 件を超える応募となり、選考時にも、どれを選ぼうかと迷うことが多くなっていたこのエピソードコンテスト。今年は少し減ったとはいえ、総数180 編の応募があり、第1 次選考を通過したのは39 編でした。

ここ数年はWeb での応募が多く、郵送での応募が減っていますが、郵送での応募も、期日までに到着したものをきちんと選考に乗せています。

応募は全国から寄せられていますが、応募数の多い所は人口の多い関東圏、次いで愛知県と続きます。残念なことに沖縄・九州・四国の南側地域からの応募が少なく(福岡の6 件以外は)広報にも一考が必要かと感じました。

コンテストを知ったきっかけは、財団のホームページを見た人も多くなっていますが、公募ガイドや登竜門などWeb 情報からのみならず、新聞の掲載記事で知った人も見受けられます。全国紙から波及して地方紙に掲載されお知りになった方も増えています。

多くの方の目に留まるメディアツールが利用されているので、その情報公開の工夫の余地がありそうです。

年代では、10 代からの応募が少なく第1 次選考に残らなかったのが残念でした。最も多かった年代は60 代、様々な体験を経ての振り返りをする歳に当たるのかと推察します。そのあと30 代、40 代と続きます。最高齢は90 代でした。

このコンテストの特長は、専門職のみならず、無資格を含む介護の現場に加わった多職種、また、家族の立場でも同等に応募できる点で「看護・介護の現場に光をあてる」と言う原則があることです。

この中から大賞1 編、優秀賞3 編、選考委員特別賞6 編を選考委員と事務局で侃々諤々選ばせて頂きました。全体的に、文章の構成のレベルは高くなり、表現力の豊かさは甲乙つけがたしといったところです。となれば、そこに表現されているメッセージ性や、作品の魅力度によるもので選ぶしかないということになりました。

「からすといっしょに かえりましょ」(藤本直美さん、訪問介護)は、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の画面を彷彿とするような団地の中の公園の場面から始まっている長編。終わりの見えない認知症ケアの中で、家族に向けられる近所の心無い言葉を、介護保険のことがよく理解されていなかったと解釈。家族の思いも聴きとりながら、当事者であるマーちゃんの視線に常に戻る様子に、認知症ケアのモデルが示されます。夕暮れどき、童謡を歌いながら二人で帰る姿が文章の中から浮かび上がるねと、選考委員全員一致で大賞が決定しました。

「食べるけどそれがなに?~苦しみは人によると知ったこと~」(宮澤あゆみさん、看護師・Web ライター)に書かれている場面は、看護師歴がまだ浅い時期に遭遇した誤嚥を繰り返す難病患者への対応です。悩みながら、本人の思いを聞き出し、嚥下の工夫をしていくプロセスは、様々な現場でも体験することではないかと読み進みます。新人だからかえってストレートに本音を聞き出しているあたりを描いたのも興味深かったです。

「存在理由」(松田正弘さん、自営業)は、息子として90代の母を介護する立場になり、その両者のやり取りの中から、たとえ長い時間がかかっても息子の夕食を作ろうとする母の姿を否定せずに支える介護の基本姿勢が素晴らしいと優秀賞に選考しました。

最後の1 行、「母の部屋でひとり、15 分ほど泣いた」には、母の日記の文章に癒され、存在理由と題したエピソードにまとめられた気持ちが良く表れています。

「介護におけるリーダーの素質とは」(岩科まみ子さん、訪問入浴)は、応募者の少ない訪問入浴介護の現場からのエピソード。一緒に組んだリーダーたちの心遣い、自然の息吹の雪や桜の花を寝たきりの方に見せる場面など、体力の要る介護の実際に、喜びを見出して働く人の姿が見えるようです。

大賞以下の3 編の優秀賞、6 編の選考委員特別賞は甲乙つけがたい作品ばかり。現場のエピソードの輝きが文章に現れた作品でした。広報誌、ホームページには選考委員特別賞の作品も掲載されています。

それぞれが現場で起こっていることを自分の言葉で表現し、その中で輝く、介護を受ける人の姿が浮き彫りになる作品が多く見られました。

介護保険が始まって四半世紀、変わって良いものと変わってはいけないものを見定めながら、日々の現場での頑張りにエールを送り、そしてエールを送られ励まされながら、難題に向き合っていきたいものです。

どうぞ、ご一読ください。