講評
第12回 看護・介護エピソードコンテスト秋山選考委員長
【今年度の応募状況】
第12 回目となる今回は、昨年の180編を大きく上回る226編の応募作品が寄せられました。応募経路はWEBからの応募が9 割を超え、DX 化の流れを感じます。応募者の年代は10 代から80 代まで幅広く、特に30 代と60 代が多い傾向にあり、働き盛りの年代と介護を担う年代が重なることがうかがえます。
応募者の背景も多様で、専門職に限らず会社員、無職の方、専業主婦・主夫などなど、看護・介護のなかでのエピソードが語られています。オレンジクロスのコンテストならではの特徴が表れています。
事務局の積極的な広報活動の成果もあり、公募・コンテスト情報サイトから情報を得た方が多く見られました。また、読売新聞・朝日新聞に加え地方紙にも掲載されたことで、幅広い地域からの応募につながりました。次回も全国からより多くの作品が寄せられることを祈ります。
【選考にあたって】
家族介護の中での思わぬエピソード、看護・介護をしているつもりが逆に教えられることがあったなどの、苦労の日常が思い起こされる中、微笑ましくも温かな文章が多く見られた中で、きらりと光る内容の作品がありました。超高齢化社会、働き盛りの年齢は仕事に専念し、その次の世代のいわばヤングケアラーの問題があちこちで浮上しつつあります。
大賞の「透明な勲章」(森元仁隆さん)は、まさにこの問題の渦中にある人の作品。「透明な勲章」という題名に表れた、ケアラーでありながら誰からも着目などされず、透明人間かのように扱われたことをさらりと書ききっています。
関わる専門職の見方の偏りも、しっかり指摘されていて参考になります。重いテーマにもかかわらず、体験をもとに軽やかに表現している点が選考委員一同の称賛を得て大賞に選ばれました。
次に優秀賞3編。「バリアフリー漫才」(島岡学さん)は、M -1にまで挑戦した介護現場からの作品。挑戦しながら、楽しみながら、介護される方も巻き込んでの1年間かけての物語。結果として現場の雰囲気が変わったという嬉しい報告もある作品で、新しいことにチャレンジする姿と、そのことが介護現場を活性化する事につながった点にメッセージ性があると評価されました。
『「普通」って売ってますか?』(時本翼さん)は、15 歳の高校生とは思えないほどの表現力のある作品。普遍性と個別性の中で、「普通って何だろう」と問いかけながら、障害のある人も、それぞれが個性としての特徴を持つことを、家族の一員として、毎日の中で感じている姿が文章の中から浮かび上がり、感性豊かに育っている様子が伝わってくる作品。世代を超えた共生社会を垣間見る作品で優秀賞としました。
「教育と介護が溶け合う場所で」(高橋香織さん)は、教育の現場から、悩みながらの日常を、そのまま素直に表現した作品。特別支援学級の担任の仕事の中で介護にあたることもあり、教育の役割なのか介護なのか、葛藤がよく表現されています。
日常生活を続けられるように支援しつつ、教育現場としてのカリキュラムも頭におきながら、結局のところ切り離せないもの、溶け合う場所に身を置いていることに気づいていくプロセスがよく表現されていて優秀賞に選ばれました。
選考委員特別賞の5編、「私にもできること」(小松澤拓登さん)、「一つと無数の、ありがとう」(佐藤将人さん)、「闘病が辛いだけの時間にならないように」(島田理絵さん)、「あした げんきに なあれ」(松葉英里さん)、「ケヤキの窓と、ふたつの国の記憶」(劉偉婷さん)は、大賞・優秀賞に劣らぬ完成度と感動を与える作品ばかりです。社会性への問題提起、作者自身の葛藤や心情の素直な吐露、そして文章表現や構成の巧みさなど、それぞれに非常に魅力がある作品です。
看護・介護に携わる中で生まれる繊細な感情、日々の小さな気づき、他者との関わりの中で揺れ動く心の機微が丁寧に描かれ、読む者に深い余韻を残します。選考委員一人ひとりが、読み進める中で胸を突かれる瞬間や、思わず立ち止まって考えさせられることも多く、強い印象を受けました。
「入選」として選ばれた28編の作品も、作者の体験や思いが真摯に綴られたすばらしい作品です。看護・介護に携わりながらコンテストに挑戦した努力の姿勢に選考委員一同、大きな拍手を送りたいと話しました。
過去の大賞・優秀賞・選考委員特別賞の作品もオレンジクロスのホームページで読むことができます。ぜひご一読ください。引き続き、来年度も、このコンテストに多くの作品が寄せられることを期待しています。




