第4回オレンジクロスシンポジウム
- 日時
- 2018年7月20日(金) 13:00~18:20
- 会場
- TKPガーデンシティPREMIUM京橋 ホール22B(東京都中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン22階)
- タイムテーブル
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【開会挨拶 13:00~13:05】
一般財団法人オレンジクロス理事長 村上 佑順【看護・介護エピソードコンテスト表彰式 13:05~13:45】
大賞・優秀賞受賞者 表彰[第4回シンポジウムテーマ]2040年への展開
【シンポジウム 第1部 14:00~16:00】『介護保険制度創設から地域包括ケアシステムへ』
座長 : 西村周三 医療経済研究機構 所長 演者 : 田中滋 埼玉県立大学 理事長/慶應義塾大学 名誉教授 【シンポジウム 第2部 16:20~18:20】『地域共生社会への展望』
座長 : 堀田聰子 慶應義塾大学大学院 教授 パネラー: 鴨崎貴泰 認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会事務局長 社会的インパクトセンター長
猿渡進平 医療法人静光園 白川病院 医療連携室長 兼 大牟田市 保健福祉部 健康福祉推進室 相談支援包括化推進員
紅谷浩之 オレンジホームケアクリニック 代表
山口美知子 公益財団法人東近江三方よし基金事務局 - 講演概要
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第1部『介護保険制度創設から地域包括ケアシステムへ』 講演録 第1部
1990年代前半の介護保険成立前夜の動向(1994年の「新たな高齢者介護保険システムの構築を目指して」(高齢者介護・自立支援システム研究会)など)から地域包括ケア論に至る20数年の流れを概観し、今日的課題について考える。
【地域包括ケアシステム論の今日的課題】14:00~15:00
演者: 田中滋 埼玉県立大学理事長/慶應義塾大学名誉教授 【第1部シンポジウム】15:00~16:00
座長 : 西村周三 医療経済研究機構 所長 パネラー: 田中滋 埼玉県立大学理事長/慶應義塾大学名誉教授 第2部『地域共生社会への展望』 講演録 第2部
領域・世代を超えたつながりから人と地域の暮らしの安心と未来に向けた希望を育む取り組みを学び、地域共生社会の実現に向けたチャレンジを考える。
第1部 エピソードコンテスト表彰式
“看護・介護エピソードコンテスト”は、在宅ケアの現場で日々活躍されている方々にフォーカスし、“現場での思いをみなさまと共有したい”との、財団設立者の強い思いにより始まりました。
4回目となる今年も素晴らしいエピソードを多くお寄せいただき、ありがとうございました。厳正なる選考の結果、大賞1編、優秀賞3編、選考委員特別賞2編が選考されました。7月20日の表彰式には、受賞者6名のうち4名の方々が出席され、表彰後に受賞スピーチをしていただきました。欠席された方々からは事前に受賞スピーチを頂戴し代読いたしました。ここでは、その受賞スピーチをご紹介いたします。
また、今回も受賞者全員で選考委員の秋山正子さんがセンター長を務めておられる“マギーズ東京”を見学し、その後、秋山さんを囲みながら意見交換を行い、受賞者のみなさまから大変好評をいただきました。
本コンテストでは受賞者に副賞として、大賞:30万円、優秀賞:10万円、選考委員特別賞:5万円が贈呈されました。なお、受賞作品は、財団ホームページ看護・介護エピソードコンテストページに掲載しています。
選考委員特別賞
「ほどほど、そこそこ、楽しんで」
吉永めぐみさん
今回の文章は、新たな分野で働き始めたころの介護現場でのエピソードです。介護ヘルパー2級の資格をとり、入った職場で驚いたこと、自分なりにどうしたら続けられるかと、工夫したことです。
重度の方の介護をする上で、なかなか体がついていかず、この職場は1年とたたずに去ることになりましたが、その後、このときの気持ちや楽しいエピソードなどを心の糧にして、当初の目的であったソーシャルワーカーの道に進み、現在はデイケアの職場にいます。
どうしても介護の大変さとか苦労の部分が画一的にテレビなどで報道されがちですが、楽しいことも沢山あると伝えたくて文にしました。
このたびはこのような機会を与えてくださいまして、ありがとうございました。
選考委員特別賞
「最後の宇宙飛行」
林侑太朗さん
※欠席のため代読
私が書いたのは、初期研修時代に担当した患者さんとの思い出です。当時の私が実際にそこで見たものは、複雑な手術の後で合併症と根気強く闘う患者さんの姿、進行がんに対し抗がん剤を使って必死の闘病を続ける患者さんの姿勢でした。「闘病」という点で外科は最も過酷な診療科の1つであると思います。
私が担当患者さんに教えられたことは、どんな状況でも「できることはある」ということです。
その患者さんの望みを十分にかなえることができたとは思えませんが、私が散歩に同行するたび、とても喜んでくださいました。病気に冒された人たちの望みをかなえる手助けをする、それが終末期医療に求められるものの本質であると教わりました。
彼女のことを思い出すたびに、世界中の患者さんに幸せになってほしいと願う気持ちが湧き、その願いこそが医師として働く綱になっているように思います。このたびは本当にありがとうございました。
優秀賞
「『帰りたい場所』へのお手伝い」
岩田舞祐さん
退院調整看護師として働き始めるまで、介護はもちろん、「自宅に帰る」支援についての知識がありませんでした。しかし、自分自身が病気をして経験した「帰れない場所に帰る」ことを今度は患者さんへと思い、一から学んでいます。
勤め始めてすぐの頃、ご家族やご本人が大変な苦労がある中で「自宅に帰す」ことが、本当にいいことなのか?と迷いがありました。しかし、今は病院から自宅に帰る患者さんに切れ目のない支援が出来るよう、在宅サービスの方々と連携し、精いっぱいお手伝いをさせていただいています。
このエピソードは、「亡くなるために帰した」という内容になっており、医療スタッフはなぜ「亡くなるために帰す」のか?と思う方もおられるでしょう。しかし、自宅で看取った家族とご本人にとってはそれが最大の幸せだったのだと実感し、今後も患者さんやご家族の気持ちに寄り添いたいと思っています。
この賞は、みなが協力し、みんなでとった賞だと思いこれからも頑張っていきます。ありがとうございました。
優秀賞
「やさしさの記憶」
二宮佐智子さん
うちで中学生の子供の宿題をみるのですが、教えているうちに互いにけんか腰になってしまい、塾でプロの指導を受けた結果、うちの中学生も何とか高校には行けそうです。
これは一つのたとえ話ですが、介護の問題も同じではないか?何の準備や知識もない介護は、ストレスばかりがたまり家族関係が悪くなる。介護される側もそれは同じ。このことは私が中学生のころ、実際に祖母の介護で学んだことです。
いざというときに慌てないよう、「事が起きる前からの予備知識」、それがとても重要で、解けない問題を1人で抱えるのではなく、専門的な問題は専門家に頼ることです。介護する人も、される人も、みんなが幸せになるには正しい知識と頼れる専門家のサポートが必要です。
人を幸せにできるのは人でしかなく、私の祖母を笑顔にし、家族を救ったのは1人の介護士さんでした。介護される人、介護する人にも、誰かが寄り添うだけで幸せな介護ができる、そう思います。今日はどうもありがとうございました。
優秀賞
「芳子さんが教えてくれたこと」
長谷直樹さん
横浜市で高齢者グループホームの介護職員をしております。この作品のご夫婦は本当に仲がよく、同じ時期に認知症を発症されたこともあり、夫婦そろって私のグループホームに入居されました。
入居されてからもご夫婦支え合いながら月日を重ねられ、この春、ほとんど間をあけずにお二人のお看取りをさせていただきました。最後まで夫婦二人三脚で人生の歩みを共にされ、夫婦の「絆」や「美しさ」を感じました。私どものケアにも課題はあったと思いますが、ご本人たちが一番望まれていたであろう「ご夫婦での生活を全うする」ことのお手伝いができ、とても貴重な経験をさせていただきました。
このご夫婦のように、グループホームには在宅生活から移られる方が多く、その方の「それまでの生活をいかに引き継ぎ、守っていけるか」が、私たち支援者に求められる役割だと感じています。「その人らしい生活」や「その人らしさそのもの」をいつまでも発揮し続けられるように、これからも努力して参ります。本日は大変にありがとうございました。
オレンジクロス大賞
「もう一人のおばあちゃん」
小山祐加さん
※欠席のため代読
このような大変すばらしい賞をいただき、大変うれしく思います。お話に登場した利用者様もきっと天国で喜んでいると思います。
介護職として働く中で、高齢者のみなさまとの出会いがあり、人生とは何かを学びました。この十数年間で、人生を変える出会いや、悲しい別れもあり、今の自分があります。介護職から看護職へとシフトチェンジしたのもこの出会いがきっかけでした。
働く場所こそ違えど、私たち医療・介護に携わる者は高齢者のみなさまを支え、守る使命があります。これからもたくさんの経験をしていくと思いますが、初心を忘れずに携わっていきたいと思います。
私はいつでも利用者様や患者様に支えられています。心が折れそうなとき、いつも励ましてくれるのは利用者様や患者様です。
「あんたがおってくれて入院が楽しいよ」と笑顔をくれ、「あなたが担当でよかった、ありがとう」といってくれると、本当にうれしく力が湧いてきます。
介護職を始めて15年、看護職につき3年目、あのころからは沢山の時が経ちましたが、いつでも笑顔を絶やさず、明るく元気に頑張っていきます。医療・介護に携わるみなさまは、心に刻まれる出会いを大切にしてください。この度は誠にありがとうございました。今後も初心を忘れず日々邁進していきたいと思います。
川名選考委員長よりコンテスト全体の講評
今回は132編というたくさんの応募があり、絞り切れないものが26編ほどありました。今回の審査を振り返ると、これまでで一番レベルが高かった。
皆様の作品の端々にも出てきたことですが、専門家の方が「地域包括ケア」について議論されていて、2040年をどうするかという議論が盛り上がっていますが、政策だけがどんどん進んでいって、まだ国民全体が置いてきぼりになっていると感じています。
このコンテストは、現場にいる方々がみているものをこれからの世の中を生きていく人達に伝えるとても大事な役割だと思っています。これをあと10年続けることで、日本 の介護現場の変遷がわかる、いい指標値になると思いますので、ぜひこれからも続けてください。
最後に、このコンテストでは、最初の患者さんとの体験を書いてくる方がすごく多い。強く思い出に残っているのは最初の体験。つまり、最初の出会いがその方がずっとお仕事を続けるかどうかにかかってくるのではないかと思い、ぜひ働き始めの方に対してはいい出会いをしていただきたいと思っています。