選考委員特別賞
第2回 看護・介護エピソードコンテスト『きみえさんちものがたり』 三上 薫さん

1/3

ささえるさん夕張は、医療法人ささえる医療研究所を母体として、夕張で介護事業を運営しています。1つの建物の中に、居宅介護支援、訪問介護、定期巡回随時対応型訪問介護看護の3事業所があります。職員は8名の小さな事業所です。以前は夕張市内の清水沢という地区で事務所を構えていましたが、現在は利用者様の一軒家を譲り受け、事務所として利用させていただいています。
私達はこの事務所を「きみえさんち」と呼んでいます。「きみえさん」とはその家に元々住んでいた利用者様で、102歳のおばあちゃんです。これからそのきみえさんのお話と、お宅を譲り受けることになった経緯をお話したいと思います。

平成24年9月。きみえさんは、元々訪問診療と看護、通所リハビリを利用されていました。訪問診療の担当は、当法人の村上先生です。ところが、通所リハビリに行く日も朝、起きられなかったり、行ってもほとんど寝て過ごす事が多くなってきていました。
訪問看護を通じてその状況を聞き、定期巡回ならご本人の起きている時間に、自宅で入浴できるのではないかと思い、ご家族様にサービスの説明させていただきました。当初、すぐには利用を決められなかった様子でしたが、「お風呂好きな母をお風呂に入れてあげたい」という気持ちが強く、定期巡回の契約をしてサービス開始となりました。

きみえさんは、定期巡回のスタッフはもちろん、他サービスの職員が来てもいつも笑顔で、いつもきれいに身支度をしており、いつも人に気配りをする方でした。入浴介助をしている私たちに「あなたも一緒にどう?気持ちいいわよ」と笑顔で言われたり、「若い時の夢は宝塚に入団する事だったの」とお話したり、本州に住んでいた時の話や、旅行の話等やさしい口調でお話されていました。
きみえさんは長女様と同居しており、市外には次女と三女様。道外に長男様ご夫婦がいて、長女様がキーパーソンでした。サービスが入った時点で既に100歳を迎えられており、ご家族皆様で交代して介護されていました。
どなたも介護には熱心で、「お母さんの笑顔がみたいし、育ててもらった恩返しができる」と言われていたのを思いだします。家族みんなで介護する、というのは出来そうで出来ないことです。家族の協力が得られず在宅生活を断念する方も多くみてきた中で、こんないいご家族に出会えてよかったと今でも思います。そしてそれも、きみえさんが家族の為に長年頑張ってきた結果なのだと強く感じました。

平成24年12月。きみえさんは体調を崩し、自宅での入浴ができなくなりました。また、以前はベッドと車いすを行き来されていたのですが、ベッド上だけで過ごす事が多くなっていました。そこで入浴介助だけのサービスでしたが、排泄介助のサービスに変更となり、毎日3回ずつ、1回15分~20分という形で対応させていただくこととなりました。

定期巡回随時対応型訪問介護看護は、平成24年4月から新しく導入された制度です。きみえさんと関わらせていただいていた当時は、国内でも実施しているところは珍しく、郡部で実施している地域は夕張だけでした。
そのため、全国から見学の方がみえた時には、よくきみえさんの家にお連れしました。その都度きみえさんには、「見学の方をお連れしていいですか?」とうかがっていましたが、いつも「どうぞ」とにっこり。見学に来られた方にも笑顔をみせ、嫌な顔せず対応してくれていました。
きみえさんは、宝塚に入りたかったという夢を持っていたこともあり、元々運動神経が良く活発な方だったようです。スポーツ観戦が大好きで、テレビで相撲やアイススケート等をみては「すばらしいね」と喜んでいました。

  • 広報誌オレンジクロス
  • 研究・プロジェクト
  • 賛助会員募集について
  • Facebookもチェック